狸谷山不動院
「有頂天家族」下鴨家のお母さん桃仙の実家として、幼かった頃の姿や、時折祖母の元へ訪れる姿などが作品中で描写されています。
狸谷不動院は真言宗のお寺で、交通安全祈祷で有名です。「狸谷」の名の通り、狸の置物があちこちに置かれています。また、宮本武蔵のゆかりの地としても知られています。
山の中、階段を250段登らなければ本殿まで辿り着くことができませんが、要所要所で「今○○段/250段」の看板をぶら下げた狸の置物があるので、楽しく登ることができました。
今は昔、左京区一乗谷狸谷不動の森に、桃仙という名の狸の雌が暮らしていた。桃のように瑞々しくて、仙人のように身が軽い。参道の二百五十段もある階段で朝から晩まで遊んでいた。彼女を軽んじるようなぼけなすは、「くだばれ!」の一言で撃退された。近隣の子狸たちは畏敬の念をこめ、「階段渡りの桃仙」と呼んだ。
ー「有頂天家族 二代目の帰朝」p.70

母が狸谷不動の祖母を訪ねるというので、私も一緒に出かけることにした。
叡山電車の一乗寺駅で下車して、曼殊院道を東へ歩いていった。
真夏の陽射しが町を焦がし、糺ノ森で濡らしてきた手拭いは乾燥昆布のように干からびた。白川通を越え、かの剣豪宮本武蔵がチャンバラをしたという一乗寺下がり松を過ぎて祖母が引き籠もっている森にはまだつかない。狸谷不動院は、ひっそりとした民家と乾いた畑の広がる町を抜け、杉の森を切り裂く薄暗い谷間のような参道を延々とのぼった先にある。
ー「有頂天家族 二代目の帰朝」p.192

苔むした石碑には「狸谷山不動院」と彫りこまれ、そのまわりを信楽焼の狸たちが岸壁にへばりつく貝殻のように取り囲んでいる。風雨に色褪せた狸たちは、健気に空を見上げて「あはは」と笑っているかのように見えた。
そこから先はひんやりした杉の森を抜ける総計二百五十段に及ぶ階段である。今では祖母が信徒たちを引き連れて、毎朝毛深い絨毯のように行き来して健康を増進しているという。その石段は、かつて「階段渡りの桃仙」として名を馳せた母が、「ツチノコ探検隊」を率いた父を迎え撃った伝説の地でもある。
「ここの石段、ちょこっと削れてるでしょう。これはお母さんが飛び跳ねたから」
「でたらめ言ってら」
ー「有頂天家族 二代目の帰朝」p.194

ようやく階段をのぼりきって広場に出ると、左手に森の緑を背負って清水寺の舞台のような足場が聳えており、その上に狸谷不動院の本殿がある。
八月炎天下の昼日中、ここまでのぼってくる参拝客は少ないようで、人影のない境内には蝉の声ばかりが聞こえていた。
母は広場の右手にある小さな社に近づいた。
その社のまわりも焼き物の狸たちが取り囲んでいて、苔むしたやつ、欠けたやつ、真新しいやつ、もはや狸ではないやつ等々がひしめき合っていた。
ー「有頂天家族 二代目の帰朝」p.195
聖地情報
○住所
〒606-8156
京都府京都市左京区一乗寺松原町6
○最寄
叡山電車 一乗寺駅 徒歩22分
市バス 一乗寺下り松町 徒歩16分
○拝観時間
9時〜16時
○入山料
500円
○公式サイト
大本山狸谷山不動院
http://www.tanukidani.com/



